ヒゲの医療脱毛は、医師の管理下で行われる安全性の高い施術ですが、それでも肌にレーザーという強いエネルギーを照射する以上、肌トラブルのリスクが完全にゼロというわけではありません。しかし、起こりうるトラブルの種類とその原因、そして正しい対処法を事前に知っておくことで、リスクを最小限に抑え、万が一の際にも冷静に対応することができます。美しい仕上がりを手に入れるためには、施術そのものだけでなく、前後の正しいスキンケアが何よりも重要になるのです。最も頻繁にみられる肌トラブルが「毛嚢炎(もうのうえん)」です。これは、レーザー照射によって肌のバリア機能が一時的に低下した毛穴に、アクネ菌やブドウ球菌といった常在菌が入り込んで炎症を起こし、ニキビのように赤く膿を持ったブツブツができてしまう症状です。特に皮脂分泌の多い男性の顔は、毛嚢炎が起きやすい環境と言えます。予防のためには、施術後の肌を常に清潔に保つことが第一です。洗顔の際はゴシゴシ擦らず、たっぷりの泡で優しく洗い、タオルで水分を押さえるように拭き取ります。また、施術後の数日間は、雑菌が付着しやすい手でむやみに顔を触らないように意識しましょう。もし毛嚢炎ができてしまった場合は、自分で潰さずに、速やかに施術を受けたクリニックに相談してください。医療機関であれば、抗生物質の軟膏などを処方してもらえます。次に、ごく稀に起こる可能性があるのが「硬毛化・増毛化」です。これは、レーザーの刺激が原因で、逆に毛が以前よりも太く、硬く、濃くなってしまう現象です。発生のメカニズムはまだ完全には解明されていませんが、産毛に近い細い毛に起こりやすいとされています。もし施術を重ねるうちに毛が濃くなったと感じた場合は、すぐにクリニックに相談しましょう。レーザーの種類や出力を変更することで改善される場合があります。また、照射出力を誤ると「やけど」のリスクもあります。日焼けした肌に照射すると、レーザーが毛だけでなく肌のメラニンにも反応してしまい、やけどのリスクが著しく高まります。脱毛期間中の徹底した紫外線対策は、効果を高めるためだけでなく、安全のためにも不可欠なのです。これらのトラブルを防ぐための基本は、日々のスキンケアに尽きます。施術前は、化粧水や乳液でしっかりと保湿を行い、肌のバリア機能を高めておくことです。